CO2を吸収して固まるコンクリート
CO2-SUICOM®(シーオーツースイコム)は、
世界で初めて製造時のCO2排出量を上回るCO2量を
固定化する環境配慮型コンクリートです。
脱炭素(CO2を減らす)から、
活炭素(CO2を活用する)への移行を推し進める
技術として期待されています。
CO2-SUICOM®:CO2-Storage and Utilization for Infrastructure by COncrete Materials.
コンクリートの主原料であるセメントは、その製造過程で大量のCO2を排出しますが、CO2-SUICOM®(以下スイコム)は、セメントの半分以上を特殊な材料γ-C2S(ガンマシーツーエス)と産業副産物に置き換えることで、セメント由来のCO2を大幅に削減しています。
セメントは水と反応して固まりますが、γ-C2Sは、CO2と反応することで固まる特性をもつ材料です。スイコムでは、γ-C2Sを配合してコンクリートを練り混ぜ、コンクリートが完全に固まる前に、炭酸化養生槽という閉じた空間に置きます。高濃度のCO2と接触(炭酸化)することにより、固まる過程でコンクリート中へ大量のCO2を固定します。供給するCO2として、火力発電所の排気ガス中のCO2を直接利用する技術も確立しています。
一般的なコンクリートのCO2排出量が288kg/㎥であるのに対し、スイコムは、セメントを産業副産物などに置き換えることによって197kg/㎥のCO2を削減。加えて、炭酸化養生槽の中でCO2を吸収・固定することで、さらに109kg/㎥のCO2を減らすことができます。これにより、合計306kg/㎥のCO2削減となり、CO2排出量実質ゼロ以下(-18kg/㎥)を実現しています。
スイコムは、一般的なコンクリートと同等以上の強度を発揮します。炭酸化反応によって表面が緻密になり耐摩耗性に優れるとともに、pHが中性に近くなることで植物や生物などの周辺環境にも優しい材料となっています。
場所:長野県軽井沢町 /
適用箇所:ブロック塀、個人住宅 /
竣工年:2023
長野県軽井沢町に建つ個人住宅。道路沿いにある、長さ110mの細長い三角形状の異形な敷地であることから、目の前を通過する車や歩行者からの視線は遮りながら、緑豊かな周辺環境を楽しめるアイデアが必要とされた。
そこで、まずはフィルターのような役割を持ったブロック塀をデザインすることに。
ひとつひとつのブロックの角度が変えられることで 視線をコントロールできるようにし、場所によっては塀を2列組み合わせて使用することでさらに細かい視線の調整が可能に。
塀が1列の場所は視線を一方向に設定でき、2列に重なる場所では、同じ角度で前後のブロックが揃うと向こう側が見え、角度が異なると遮断される。
ブロックには「CO2-SUICOM」を使用。
コンクリートの主原料であるセメントの一部を産業副産物に置きかえ、そこに二酸化炭素を吸収する材料を加えることで、製造時の二酸化炭素を削減するというもの。
このブロックを約2050個使った高さ3mの塀をずらしながら5列平行に配置し、その隙間を「埋める」ようにして居室を設計。
寝室や浴室などのプライバシーは確保しつつ、リビングやダイニングには適度な開放感など、条件に応じてブロックの角度を3度単位で調整し、最終的にグラデーション状にブロックの向きが変化するデザインとなった。
Photographer :
Takumi Ota, Masahiro Ohgami
CO2と反応して固まる材料です。製造時のCO2排出量はセメントの約1/6です。
製鉄の際に排出される高炉スラグや、火力発電の際に排出されるフライアッシュなどが使えます。
純度の高いCO2はもちろんですが、過去に工場からの排ガスでCO2濃度10~15%程度のもので炭酸化養生をした実績があります。
コンクリートがある程度固まった段階で、CO2を吸収させる設備(Carbonation chamber)が必要です。
品質は一般的なコンクリートと同等です。低アルカリであり、環境にやさしいコンクリートになります。
石灰石(CaCO3)と同程度にCO2を固定化しているので、一般的な環境では再漏洩しません。
現時点では日本国内のみで製造販売をしています。今後、海外でも製造販売をしていきたいと考えています。
コストは高くなりますが、CO2固定量に応じて異なります。
違います。コンクリートの名前です。